電話占い・前世占い・恋愛相談の〜玉響〜:TOP > 連載小説「YURA」
とは言うものの、周りを囲む人たちの中には男性もたくさんいるが、彼氏とか好きな人に当たりそうな人を見つけることは出来ない。大体こういう場合、醸し出す雰囲気でなんとなく分かる事が多いので、恋愛がらみの悩みではないのかもしれない。――そんな事を考えながら、早速聞いてみることにした。
「どういったお悩みですか?」私が彼女の背景を探りながら尋ねると、更に俯いて「はっきりとは分からないんですけど彼が、どうも浮気をしているみたいで……」――ええ!!浮気!?ちょっと待って、もう一度よく見てみよう…… …… …… 駄目だ、分からない。こうなれば直接聞くしかないか。
「彼ってどんな人なんですか?」「どうって言われても……」最初は戸惑っているように見えた彼女だったが、次第にゆっくりと話し始めた。
「彼ってどんな人なんですか?」「どうって言われても……」最初は戸惑っているように見えた彼女だったが、次第にゆっくりと話し始めた。
「彼は、この大学の理工学部の三年生なんです。最初は友達の紹介で会ったんですけど、私、理系の話って全然分からなくって……。多分、私、つまらなそうな顔をしてたんでしょうね。彼が気を遣ってくれて……まあでも、話題を変えるわけではなくて、今まで話してた事を、私でも分かるように説明してくれただけなんですけどね」彼女はそういうとやさしく微笑んだ。――話を聞きながら彼女の背景に浮かんで見えたのは、やっぱりやさしそうに微笑む男の人の顔だった。見た限りでは、とても浮気をするようには思えない。なにかのすれ違いや勘違いによって誤解を生んでしまっているのだとは思うんだけど……。
「最近、就職活動が忙しくてちゃんと話せてないんですけど、電話をかけても出ないし、メールしても返事が来ないし、大学にも来ていないみたいなんです……」――さて、こうなってくると、彼の方の意識もちゃんと見てみないといけなくなってくる。ちなみに彼女の頭の中にある彼のイメージから彼の意識に入りこむために、まず見えてくるのは彼女と関わりのあるシーンや彼の感情からになってしまう。だから、彼の家族に関する事だったり、彼の子供の頃だったりを見るためには少し時間を必要としてしまうのだ。でも今回は彼女に直結した部分だけを見ればいいので、その作業は一瞬である。もっと言えば、すでに原因は見えている。それは……
研究室のカーテンを開けると、既に日が暮れ夜になっていた。時計をみると夜の九時。昨日の昼からここにいるから、三十時間以上もここで過ごしていたことになる。そうだ、と思い立ち携帯を取り出すと、案の定、充電は切れて液晶は暗いままだった。電源を押しても、何も言わない所をみると、研究室に入った時には既に充電は切れていたのかもしれない。普段から時計としての機能がメインのような携帯なので別に誰かが困りようもないけれども。時間を意識した途端、思い出したかのように、腹の虫も喚き始めた。同時に睡魔もやってくるが、腹の虫の強力な訴えの前にこちらはすごすごとおとなしくしている。
とりあえず、考えていたような結果は得られなかったものの実験は一段落ついた。本当は、これをレポートにまとめなければならないのだけれど、今の自分にそれが行えるとも思えない。そんなことより喚き出した腹の虫を抑え、睡魔に十分な睡眠を与える方が先決だ。この一週間、自分のアパートと研究室を行ったり来たりしていて、全くと言って良いほど寝ていない。そんなにも寝ていないのにも関わらず食欲の方が勝る状況に、こんな時ながら驚いていたりする。
――あ、やばい……そう言えば、研究室に篭ってから彼女に連絡をするのを忘れてた……。
それを思い出し携帯を手にするが、充電が切れた状態が回復しているはずもなく、やっぱり何も言わない液晶があるだけだ。
――まあでも、携帯が繋がらなかったとは言っても、二日くらいなもんだし平気だろう……。
と考えながらも、妙に不安が押し寄せてくる。こうなると何故か居ても立ってもいられなくなってくる。急いで帰り支度を整えて、研究室を後にした。
大学からアパートまでは最寄りの駅を越えていくことになる。駅の北側は大学だけでなく会社が入っているビルも結構ある為、商店街や居酒屋が立ち並び栄えているのだが、南側は閑静な住宅街になっている。駅を越えるので歩くと大学まで二十分近くかかるのだが、家賃の相場が一万円くらい変わってくるので、学生のほとんどは駅の南側に住んでいる。駅を越えて南側のエリアになると、店どころかコンビニさえもないので、大体は北側で食事をして南側へ向かうのが常であり、本日もいつもの定食屋で食事をとって帰ろうと考えていたのだが、一刻も早く家に帰りたいという欲求から、食事はコンビニ弁当にしようと変更した。
弁当購入の為、コンビニに入ろうとドアに手を伸ばそうとした時、少し離れた場所で声が聞こえて手が止まった。いつものありがちな風景なので、特別立ち止まるようなことでは無いのだけれど、手はそれより先にドアを押そうとはせず、足もそれ以上前へ進もうとはしなかった。何故なら、その声は聞いた事がある声。しかも、今、声を確認したいと思っていた、まさに、その声だったからだ。
凄く疲れていた。本日三社目のOB訪問。友人からOB訪問は事前に入社後の業務内容を聞けたり、人事関係の部署の人と繋がりができたりするのでやっておいた方がいいよと言われ、手当たり次第に少しでも繋がりのあるOBがいれば会社を訪問して会ってもらっている。
今日は二社目での話が予想以上に長引いてしまって、三社目に辿り着いたのが予定の時間よりも一時間くらい遅れてしまった。もちろん遅れるという連絡は入れてあったので、問題は無かったのだが、幸か不幸か話が終わった時には、ちょうど会社の終業の時間になっていた。そうなってくると当然の流れのように出てくるのが「飲みに行きませんか?」のお誘い……。こういう状況におかれては、無下に断る訳にもいかず、仕方なくのお付き合いが、今日だけでなくここしばらく続いている。もともと、そんなにお酒が強くないので、帰るとそのままベッドになだれ込んでしまい、彼との連絡も全く取れていない。そして、今日。行き付けの店があるということで、連れてこられたのが、何故か大学の近くのバー。まあ、帰るのには近くなるのでありがたいはありがたいけれどもありがたくないと言った複雑な気分。
そんな気持ちでいたからだろう。今日は特に乗り気になれず、店を出た所で二件目に誘われたものの、上手く断れず少し押し問答を繰り広げてしまった。まあ、結局押し切られ二軒目に繰り出すことになってしまった……だったら、断らなければよかったなと、若干の後悔を残しつつ……。
つづく
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